今回はロックテイストのラブソング。
あたしは前奏が終わる直前で、マイクに入らないように息をスっと吸って歌い始めた。
歌いながら、湊くんと会った時のことを思い出しながら。
今まで本当にバンドが嫌いだったのにな。
今はその嫌いだったバンドのメンバーになってる。
一番最初に見た時の湊くんは本当にキラキラしてて、湊くんの歌う曲に虜にされた。
だけど、本当の湊くんは難がありそうな人で
『ラブソングなんか誰が歌うかよ!』っていう自分のわがままを
メンバーに押し付けてこのバンドを乗っ取ってるように見えた。
そんな湊くんだけど、どんなに冷たい言葉を浴びさせられて言い返したって泣いたって
「嫌い」に思うことは一度もなかった。

