「それ本当に正直って言うの?「湊ー!どこだー?始めるぞ!」
あたしがそう言ったと同時に、隣からマイク越しに広夢くんの声が聞こえてきた。
「だってさ。ちょっとだけど手あったかくなってきたんじゃね?
緊張するなんて今回だけだから、それも含めてこの時間を楽しめよ。
じゃあ、一曲四人で演奏したら、広夢が呼ぶからそれまで待ってな」
と言って湊くんはあたしから手を離して、音楽室に行ってしまった。
やっと手が離れたと思って、ホッとしていると……
指先がちょっとあったかくなった感じがするし、手を開いたり、閉じたりしてもさっきまでの硬い感じはしない。
湊くん……あたしの緊張をほぐすためにしてくれたんだ。
そして、ドア越しに広夢くんがあいさつをする声が聞こえて歓声でいっぱいの中、今日のライブが始まった。

