「……はい」
あたしの小さな返事を聞くと、湊くんは振り向いて自分の所に戻って行った。
……湊くんにはバレバレだったんだね。
あたしが失敗することを恐れていたこと。
でも失敗してもいいって言うんだったら、ボリューム大きくされてもさっきより軽い気持ちで弾けそう。
「じゃあもう一回最初からやってみよっか?
祐、もう一回」
その指示を受けて祐くんはバチをカチカチと4回打った。
鍵盤に置いた手はさっきと違って、周りの音に気を配れるようにもなった。
湊くんの言葉で自分自身が安心できたんだ。
再び始まった“未来にむかって”。
今度は自分の音もみんな音も聞こえる。
後は置いてかれないように、リズムよくみんなと一緒についてけばいい。
最後の余韻まで湊くんに止められることなく曲が続けられて、初めて一緒にみんなと弾くことができた。

