湊くんはそれだけ笑えんならもう大丈夫だろと言ってあたしのおでこを突いた。
「俺は過去に結愛に何があったかは知らない。どうだっていい。
過去なんて余計なもの、今の現在にも未来にもそんなもの必要ねぇんだよ。
大事なのはここにいる『今』なんだよ。
そのことを今から教えてやる。だから、俺についてこい」
湊くんは一度腕時計を見ると、あたしの手を掴んで走り出した。
「ちょ、ちょっと!」
それはもう風になったかのようにダッシュで。
湊くんは上手に生徒たちを交わしていって。
5階までの階段は毎回上る時、苦痛でしょうがなかったけど
この湊くんに連れられて走るのがドキドキするけど楽しくって、気づいたら微笑んでる自分がいたんだ。

