ブルーウィンズのみんなが来た日、あんな過去があったのにどうして楽しくピアノが弾けたのかは分からない。
でもピアノを弾いたことであたしは思い出してしまった。
あんな手が震えてしまうくらい、あの後ピアノを弾くのが怖くなった。
弾かないじゃない、自分自身がピアノを弾きたくないと思っていて
みんなにも『弾けない』と言っていた。
もうあの日が来ることはないことは頭では分かっている。
でもどうしても怖いんだ。
今は自分の手は自由自在に動いてくれるのに、あのピアノの前に行くと手は震えるだけで動いてくれない。
そう言えば、バンドが嫌いになったのもあの時と同じくらいだった。
ピアノを辞めてから、音楽なんて!って思う自分が居始めて
特に身近では帰り道で高校の前を通っていた時に聞こえてくるバンドが大嫌いになった。
自分はあんなにピアノが弾くのが嫌になるまで耐えてきたのに
あの人たちは気取って、大きな音を出して喜んでいて……それがどうしても許せなかったんだ。

