あたしがピアノを弾いていて、クライマックスに行く直前で何回かミスをしてしまった時、後ろで聞いていた先生が『ストップ!ストップ!』と言った。



あたしは弾くの止めて、鍵盤から手を下ろした。



「もうここで転ぶの何回目なの!



最近、お家でちゃんとピアノ弾いてるの?前より悪くなってんじゃないの?



はい、もう一回。次は絶対にそこで間違えないように!」



「…………」



もう嫌だ、弾きたくない。



こんな苦痛な時間を味わうなら、お家で好きなことしたい。



「ちょっと、返事は?」



「……はい」



あたしはもう一度鍵盤に両手を載せて、間違えた部分の楽譜を見ると弾き始めた。