―――おっ。
男の顔が、別の意味でニヤけた。宙に、何かを感じたようだった。
「ほらよ。」
その言葉を合図にするかのように、今度はシャッターが開きはじめた。さっきと違って、錆び付いたような音はいっさいせず、スムーズに、一気に開いた。
「うわっ。」
その本能的に出てくる言葉より、優れた褒め言葉などこの世に存在しない。宙は、蛍光灯に照らし出されるその車に一瞬で心奪われた。
「どうだ。極上もんだろ。この年式で、ここまで綺麗なのはそうそう見つからないぜ。」
「ですね。」
さっき、男に感じた怒りなど、どこかに行ってしまったかのように、素直に、驚きと喜びを表現した。ただ、ここまで極上ものだとしても、ただ、見ているだけでは満足しないのが男だ。宙は、自ら現実に戻すように確認した。
「で、これいくらです?」
ここで、あまりにも現実離れした金額が出てこれば、目の前にあるものは幻で終わってしまう。祈るような気持ちだった。
「これでいいよ。」
男は両手を拡げた。
―――百万・・・。
幻に終わった。がっくりと、肩を落とした。それを見て、男が聞いてきた。