「先輩。ありがとうございます。」
少し涙目になり、その場にへたりこんだ。
「お前ね、レギュラーとハイオクの区別くらいしろよ。基本中の基本だろうが。」
「そ、そうなんですけど・・・。」
そこから、延々と言い訳が続いた。店長が出かけた事。他のバイトが、風邪で休んでいなかった事。最後には、バイトとは関係ない不平不満まで聞かされた。
「わかった。わかった。俺にはいいから、それを店長に言い訳しろよ。」
「なんでですか?」
「だって、お前。ハイオク満タンを、タダにしただろ。店の損害には、店長、厳しいぞぉ。」
からかうつもりで、そう言った。けれど、晴はそれを真に受けたようだ。
「マジすか?やっぱ、給料から引かれたりしますかね。」
しょんぼりした晴の姿を見て、宙は大笑いした。学校でも、最近は親の前でも、見せた事のない表情だった。
その笑顔に連れて、晴も薄く笑った。よくわからないけれど、取りあえず笑っておけ、そんな感じの笑顔だった。
それが、おかしくてたまらなくて、宙はさらに声をあげて笑った。