施設の前に車を停め、アレックスとコートニーは車を降りた。

建物に明かりはついている。

だが人影は見当たらない。

軍の医療施設ならば、医師の他に護衛の兵士もいる筈だが。

「臭うな」

アレックスが呟く。

殺気とか、気配とかではない。

数々の事件事故の現場を取材してきたジャーナリストであるアレックスが嗅ぎ分けられる、『何かが起きている臭い』。

念の為に右手にMARK23を握り締め、施設のドアを開けたアレックスは。

「!!」

『何かが起きている臭い』とは別の、嗅覚で嗅ぎ取れる臭いに気付いた。

鼻腔を強く刺激する鉄錆臭。

血の臭いだ。

「……!」

コートニーがすかさずバレットM82を構え、アレックスを下がらせる。

男とはいえ、民間人を先行させる訳にはいかない。

屋内での戦闘に向かないアンチマテリアルライフルだが、そうも言っていられないか。

先頭に立ち、コートニーはゆっくりと建物内を進んだ。