「慣れるもんじゃないさ、この光景は」

ジェフがアレックスと同じ感想を口にした。

「戦場に何度も立っていれば麻痺するというが、あれは嘘だ。人が死に、殺され、自分の身も危険に晒される。そんな状況に慣れる訳がない。慣れたと思っていても、確実に精神は蝕まれている」

「……」

ジェフのような考えを持つ兵士に出会えて、アレックスは運がよかった。

戦争狂、人殺しを愉しむような兵士の取材など、例え仕事であっても御免だ。

まともな感情の通っている人間であった事を、アレックスは嬉しく思う。

そんな事を思っているアレックスに気付いたのか。

「何かアンタとは気が合いそうだな」

グライムズが笑みを浮かべた。

初対面の時から思っていたが、兵士とは思えない人懐っこさだ。

このグライムズという青年にも好感が持てる。

こうして知り合えたのも何かの縁だ。

「よかったら」

二人に名刺を差し出しながら、アレックスは言う。

「従軍取材の許可を貰えないか」