大通りでは、中央分離帯に並ぶ極太の金属製の街路灯が、へし折れそうなほど傾いていた。

街路灯の下には、ワンボックスカーとマイクロバスがぶつかるようにして停まっていた。

そこから離れた所にも、セダンやタクシーが数台、車線を無視してあっちこっちを向いて停まっていた。

交通事故の類でない事は分かる。

どの車もボコボコにへこんで真っ黒焦げのスクラップ同然だからだ。

車だけではない。

路面も一面、真っ黒に焼け焦げていた。

へし折れた街路灯辺りが、爆発の中心だろう。

アレックスの立っている位置から爆心地までは目算で数十メートルはあったが、吹き飛んできたガラス片や金属片が、敷き詰めるような勢いでぶちまけられていた。

小さなものだけでなく、すぐ横の民家の庭では、爆風で吹っ飛ばされてきたのだろう、真っ黒に焼け焦げた小型セダンが裏返しになっていた。

爆発の瞬間、もしここに立っていたとしたら…。

全身に突き刺さり、肉を抉る鋭い破片…。

想像するだけでゾッとした。

夢中でシャッターを切るうちに、更に色々なものが見えてきた。

歩道の脇では、事故に巻き込まれた被害者らしきイラク人の中年男が、顔の半分を血塗れにしたまま、アメリカ兵の事情聴取を受けていた。

他の負傷者は既に病院に搬送されたのだろうか、姿は見えなかった。

が、被害者の『姿』は他にもあった。

事情聴取を受ける男の数メートル先に、歩道に沿って2メートル弱の『長いもの』が幾つか横たえられていた。

米軍の備品であろうアーミーグリーンのテント布をかけられた『それ』は、しばらくするとサイレンを回していない救急車に次々と積まれて、どこかへ運び出されていった。

それらは気付いた時から運び出されるまでの間、ピクリとも動きはしなかった。