気になる彼への恋心



内心では悠長に構えていたのかもしれない。

だって、もしかすると最終週になるこの時に風邪を引いて初めて焦ったのだから。

まだ1週間もあると言う状況が、最終と言う状況まで追い詰められるだなんて誰が思うのだろう。

と言うか、風邪が長引きすぎた。それでも今日はまだ咳が残っていてマスクでの登校になったのだが。

二席続けてマスク着用とは、シュールな光景だなと思いながら彼の背を見た。


線の細い体。骨ばってる肩。揺れる黒い髪。


もしかするとこれが最後かもしれない。

この先もまた席が近くなる可能性が十分にあるけれど、ないかもしれない。

そうなればどうなるのか。ただのクラスメイトだ。ノートを貸してくれるクラスメイトから墜ちてしまう。

多分、私はそれを後悔するのだろう。

安易に未来が予想できた。人から見れば馬鹿馬鹿しいかもしれないけれど、私は至って真剣だった。


「藤堂さん」

「へぁ!?」


真剣だった故に、不意に声を掛けられて驚き、


「休んでる間、他の奴にノート借りてちゃんと書いたのあるから、いつも借りてる分、よかったら……って、え?」

「っ――!」


真剣だった故に、私がノートを貸さなくても彼は良かったのだとショックを受けた。