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次の日にはもう高瀬くんは通常通りにマスクをしていた。
プリントを回すときに見ていると目が合うものの、特に反応をせずに視線をそらして、前に向き直る。
恐るべし、マスクの力。やはり顔を隠すと防御力も上がってしまうのか。
残念に思いながらも、頼まれればノートを貸していた。そんな昨日からを含めての1週間はあっと言う間に終わり、気がつけば4週間目に突入していた。
話はポツポツするようになったものの、連絡先等を聞けていない始末。
このままでは、席が遠くなって話す機会が減るし、繋がりであるノートを貸すこともなくなってしまう。
さて、どうしようか。
「もう告れよ」
「めんどくさいだけでしょ」
「まあね」
友人に言ったところでロクなアドバイスをくれない。
が、もしかすると彼女なりに後押しをしてくれているのかもしれない。
……と、思いたい。
ともあれ、現状をまた変えなくてはいけないのは事実。
今の関係は友達にも満たないのだから。

