気になる彼への恋心



彼と目が合い、驚いた。彼もまた私の目を見て驚く。

違うところと言えば、


「な、んで、俺の事見てんの……っ」


普段の彼からは見たこともない表情。

この時間でも分かるくらいに赤い顔。照れた顔。

きっと、マスクが無くなってから頻繁に手を口にもっていっていたのも、素っ気なかったのも、顔を隠してしまいたかったからなのだろう。

だってまた、そうやって顔を隠している。

そんな私も、彼の意外な反応を見て顔が熱くなる始末なのだが。


「俺、ほんと顔見られるの苦手だからやめて」


けれど、彼がそう言ったときには私は思わず吹き出してしまった。

席替えしてからの緊張が解けたと言ってしまえば話が早い。

自分でも驚くくらいに、落ち着いた気持ちを持つことができた。

ふわふわした気持ちが漸く地について根付いた瞬間なのだろう。


「高瀬くんがそんな事言うなんて意外」

「笑うのやめて」


クスクスと笑う私に不機嫌そうな掠れた低い声を上げる。


「ごめんなさい」


と言えばふいっと前をまた向いて


「別にいいけど」


とぶっきらぼうに言った。