「私さ」 実歩が突然俺の腕を握った。 「ん」 「一回家に帰ろうと思うんだ」 胸が熱くなった。 カァッと、胸が。 ドクッドクッと、心臓が鳴る。 実歩に伝わりそうなくらい、大きくてはやい鼓動。 なんでだろうな。 失いたくないから? 「…なんで」 「親にちゃんと言わなきゃ、って。」 「ああ」 「逃げてばっかじゃ、何も始まらない。」 それが実歩の結論か。 何となく、安心した。