樹に私のそばにいてほしい。
またみんなで笑い合いたいし、樹と恋人のように過ごす時間だってほしい。
でも樹には、生きていてくれた間だけでも、たくさんのものをもらったから……。
私は勇ましく腕で涙を拭い去る。
もういろんなもの、諦め続けるのはやめるよ……。
樹みたいにいつか私も、キラキラ輝いてみせるよ……。
ねえ、だから私、樹にしっかり言うよ。
そっと瞼を下ろし、彼を想って声を紡ぐ。
「樹、いっぱいいっぱいありがとう」
その時、風がふわりと優しく私の周りを駆けた。
瞼の裏にほんの一瞬、ニィッと歯を見せて笑う日に焼けた少年の顔がカラフルによみがえる。
耳元を、くはははっ!って弾けた笑い声がかすめる。
私は声もあげられず、すぐさま目を見開いた。
無邪気な風が、私の前髪をイタズラに吹き上げて一気に駆け上る。


