「樹、まだいるかな? 明日香だよ……」
みっともなく震えた唇。
やせっぽちな声。
一年ぶりに話しかける声がこれなんて、まったく情けない。
でも私は、手紙をまるでお守りみたいに胸へ押し当てる。
熱くなる瞳を誤魔化して、大きく見開く。
夜空の星が私に笑いかけてくれているから大丈夫。
不安も迷いも、ほんの数分前の過去に捨ててきた。
だったら、笑顔で会わなくちゃ、彼に。
私は背筋を伸ばして、もう一度星々に眼差しを注ぎ直す。
「樹は優しいから……、ねえ、待っててくれたよね?」
ありったけの自信を引っ張りだして、私は口角を力いっぱい引きあげる。
きっと、詩織みたいに可愛い笑顔はできていないだろう。
私の笑顔はどうせ、かわいげの足りない、やんちゃなしたり顔。