やわらかなはずの薄紅の唇を、血が出そうなくらい、かたくかたく閉ざしきった詩織が……。

あんなにも私を拒絶したのはなぜ……?

亡くなった人を、それも私たちの大切な人を、あの優しい詩織がイタズラになんて使うわけがない……。

疑問が次々浮かぶのに、彼女にかけるべき言葉が出てこない。

でも、心の奥にしまっていた想いは、胸の内側から溢れかえってくる。

想いを必死にとどめていた喉が、焼けつくように熱くなる。

真横から差し込む赤々とした太陽に目を細めれば、今だって、最後に見た樹の屈託のない笑顔が浮かんでくる。

だから私は、両手で力強く涙をなぎ払う。

クリアになった視界に、目をみはるふたりの幼馴染の顔が飛び込んでくる。