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「何してんだ!!」

叫び声が駆け抜ける。

強く力をこめた私の手から、詩織の手が乱暴に抜き去られていく。

私はよろめき、無様に壁へぶつかる。

強く押し当てられた肩が、じわりと痛む。

夢だったらよかったのに、違うらしい。

「詩織に乱暴な真似して! 詩織が、何したっていうんだよ。お前、どうしたんだよ!?」

私の目の前へ、突如人が滑り込み、立ちはだかられる。

まるで仇を見下ろすように、大きく見開いた瞳を向けてくる康太に……。

私は子供みたいにぽたりと、服へ涙が垂れた。

長年の友達なのに、私には彼女がわからない。

壁のように立ちはだかる康太の向こうに、見えていた。