映画のワンシーンみたいなふたり。
踏み入る隙なんてあるわけがなかった。
触れ合うふたりの距離が、呼び名が、物語った。
私や康太よりも長い、幼稚園からの仲。
特別な時の流れがそこに確かにあった。
私は肩からさげていたカバンをこっそり背中へ追いやった。
カバンの中に押し込んでいる意気地なしのラブレターなんか、隠してしまえ、本気でそう思った。
「樹のヤツ、いつまで詩織の頭撫でてんだよ~! あんまりそうしてっと、邪魔してやるぅ!」
そう言って拗ねながら思いきり二人に抱きついていった康太。
空にまで響いた三人の賑やかな笑い声。
この声がもし聞けなくなるくらいなら、私の気持ちなんてどうでもよかった。


