あのもどかしい距離感は、今だって鮮明に思い出せる。

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樹の姿は、いつも緑色の網の目の向こうで煌めいていた。

網の目には到底おさまりきらない、夕日で焼けたグラウンド。

白いホームベース。

そこに低くしゃがんだ、誰よりも広かった白い背中。

一直線にくりだされた白球。

その時、美しい音は空にまで轟いたのだ。

彼のミットへすっぽりとおさまった剛速球。

爽快な音に打ち抜かれて私は目を輝かせた。

彼のかまえるミットには、いつだって魔法がかかったみたいに球がおさまったんだ。

そして、白く輝く大きな背中の彼がすっくと立ち上がってチームメイトに手を振れば、みんなが笑顔で駆け集まってきたんだ。