「ね、覚えてる?」
「なに」
「町内会の企画で肝だめしがあった時のこと。
あんたと一緒に回ることになったんだけど、その時も『蓮ちゃん待って』って。
でもその時は私も怯えてたから余裕がなくて…ついつい『ついて来ないでよ!』って言っちゃったら、
あんた泣いちゃって…。
ひどいことしちゃった…」
「……」
思わず閉口する。
さすがに、この話は…。
あの時、泣いたのは俺しかいなくて…それで付けられてしまったのが『へなちょこ蒼ちゃん』だなんて不名誉なあだ名だった。
はっきり言って、トラウマだ
なのに持ち出すとは。
ほんと、無神経なやつ。
それは遥か遠い昔の話だろ。
今持ち出して、なんになるってんだよ。



