「な、なんかさ…」
その気まずい空気を嫌がるように、
しばらく無言で歩いていると、蓮が口を開いた。
「な、なつかしいよね、こうやって手つなぐの…!
昔もさ、蒼ってば『蓮ちゃん待って』って言いながら、私と離れたがらなかったもんねー」
「……」
いきなり昔話か。
蓮がこうやって過去の話を持ち出してくる時は、たいてい俺をからかいたい時だ。
さっきの説教の腹いせのつもりか?
いちいち真に受けてやるかよ。
「ああそうだったな。
けど今は、ついてきてやってるんだけどな」
「そ、それはあんたが勝手にそうしてるだけじゃない」
「ああそ。
じゃナンパも断らないほうがよかった?」
「そ、そんなこと言ってないじゃない…」
と、絡めていた指の爪で、俺の手の甲に爪をたてる蓮。
ああ痛い痛い。



