俺と先輩のワンオンワンに気づいた見物人から、歓声とどよめきが聞こえ始めた。
「はぁーまだまだだなぁ。
おまえに部長譲ったの、不安になってきた」
「…はは。
引退する身なんすから、も少し手加減してくださいよ」
「っても、こんなんじゃあ、不安でおちおち見てらんねぇよ」
「だいじょぶです。
来年は俺が必ずインハイ連れてってみせます」
「へぇずいぶんデカい口叩くな。
それはおおいに楽しみだ、なっ」
再び突破されそうになるが、そうはさせない。
回り込んで、動きを止める。
ったく、なんなんすか、先輩…。
柄にもなく嫌がらせとか、勘弁してくれよ。



