堺先輩は優しく話し掛けながら、階段に向かって行った。



「怒らせたなら悪かったよ明姫奈…。
一緒に帰ろう?」


「いや!出て行ってよっ」


「明姫奈…」


「出て行くまで私ここからでない!」



と部屋に入ろうとしたところで、駆け上がった堺先輩の手に捕まってしまう。



「俺嫌だよ、明姫奈。
こんなケンカなんかしている暇あったら、おまえと少しでも仲良くしていたいのに。
俺が悪いのなら謝るから。
ごめんな、あき」


「『ごめん』なんていらないよ」


「……」


「どうしてわからないの?
鈍感!」



明姫奈は先輩の胸にごちんと頭をこすりつけた。



「ただ『好き』ってだけ言ってくれればいいのに…。

『ずっと好き』って…『どんなに離れても好き。だからずっと好きでいろ』って言ってくれればそれでいいのに…!」



「明姫奈」



先輩は大きく目を見開くと、ぎゅっと明姫奈を抱き締めた。



「そうか…。ごめんな。
それだけでよかったんだな…。
俺が弱虫だったな…」



弱虫…。



先輩の言葉に私の心は鈍く反応した。