「蓮、待てよ、蓮っ」



私は振り向かずに小走りになる。

けど、蒼の脚はずっと速くて、肩がつかまれた。



「待てよ、蓮…」
ごめん、俺約束破っちまって」


「……」


「おまえのことが好きだったんだって、岳緒が。
告白するっていうから、つい…」



岳緒くんが…?



「だから…許してくれよ」


「ちがう…許してもらうのは私の方だよ…。
なにも言えなくて、ごめんね…」


「蓮…」


「私、もっと大人になりたいよ…。
勇気を持ちたいよ…」



蒼はそっと私を抱き締めてくれた。



「大丈夫だよ…おまえの気持ちはわかってるつもりだ。
待ってるから。
俺はいつまでも待てるから、焦らなくていいんだ」





優しい蒼。



大人な蒼…。




だからだよ。



だからこそ、私は焦るの…。

私も蒼と並んで進んでいきたいの…。





どうすればいいの?



誰か教えて。



私どうすればいいの…。





家の前につくと、その答えを教えてくれそうな人物がいた。



けどその子も、私みたいに泣いていた。



「明姫奈…」



「蓮…」



明姫奈は私と蒼をみると申し訳なさそうに紅く腫れた目を伏せた。



「ごめん、邪魔しちゃった…」


「どうしたの?
今日、先輩とデートだったんでしょ…?」



一緒に過ごせる時間もあと少ししかないから、って楽しみにして早々と帰って行ったのに…。



「あんなヤツ、もう知らない」



明姫奈は言い捨てた。



けど、震えているその声は、強がっているのがありありだ。



私は蒼をちらとみた。

蒼は戸惑った顔をしていたけど、諦めたように視線をそらした。



「入って、明姫奈」



立ち話もなんだから、と私は明姫奈に玄関に入ってもらった。