初めて流した嫉妬の涙を優しく吸い取ってくれた唇は、

そのまま、

震える私の唇をそっとふさぐ。





「…可愛い」


「……」


「おまえ、今日何回俺に『可愛い』って言わせれば気がすむわけ?」



「ば、ばか…。
ヘンなこと言わないでよ…。
こんな嫌なことを考える女、可愛いわけないじゃない…」


「ん…でも、蓮は別」


「……」


「今、蓮はきっと、すごく嫌な気持ちになってるんだろうな…。

けどごめん…。

俺はそれが嬉しくて仕方ない」


「…!?
いじわる…!」


「そうだよ。
だって可愛いんだもん」



いじわるな性格。



でも、そんな蒼の勝手な言葉に、

どうすることもできなかった嫉妬が、溶けるように消え去っていく…。



あれ…。

私も相当、調子のいい性格なのかも…。





「あいつは…アカネはさ、一年位前に大会で知り合って、コクられたから付き合ったんだ。
同じようにバスケ部だったし、性格もサバサバしてて気が合ったし。
…なにより、背格好がおまえに似てたから」


「……」


思わず見上げると、『ひどいだろ』とでも言いたげに、蒼は苦笑いを浮かべていた。



私の髪を撫でながら、苦々しげに続ける。



「俺、あいつに本当にひどいことしてしまったんだ…。

付き合ってた頃、あいつの髪はセミロングだったんだけど、俺はしきりに伸ばしてくれってお願いしたんだよ。
邪魔だから嫌って言ってるのに、けっこうしつこく頼んじゃって。
それをあいつは不思議に思ってたんだろうな。
ガキな俺は全然気付けてなかったんだけど…。

覚えてない?
一年前くらいに、おまえ、俺の大会に応援に来てくれたことがあっただろ?」


「あ…そういえば…」


「その時に俺、あいつにおまえを紹介したんだけど…
とたんにひっぱたかれて。
直後の試合であいつはミスの連発。
その直後、『あんたなんか大っ嫌い!』って手痛く振られた」


「……」


「おまえ見て、俺の本心に気づいたんだろうな。
…女って、どーしてああ勘がいいのかなぁ」


「……」


「だから、それからは俺、告られても付き合わないようにしたんだ。
そしたらクールとか硬派とか言われるようになるし、うるせぇよ、ってな」


「……」