「明姫奈…おはよ」



思い切って、声をかけた。



「おはよ…」



よかった…!

ちゃんと返してくれた…!



合わせてくれない目は、気不味そうに床を見つめている。



しばらく、お互いに押し黙っていたけど―――





『ごめんね』





ユニゾンした言葉に驚きながらも続けたのは私だった。



「どうして明姫奈が謝るの?」



明姫奈も私と話したがってたんだ、ってことがわかったのが嬉しくて、

泣きそうになるのをこらえながら、私は首を振った。



「明姫奈の言う通り、私はわからず屋の子供だったんだよ…。明姫奈が謝る必要なんてないよ」


「ちがうよ、蓮。
悪いのは、私だよ…。
私、あの時すごくつらくて、悲しくて…もうどうすればいいのかわからないくらい落ち込んでしまってて、つい、蓮に八つ当たりしちゃっただけだから」


「八つ当たり…?」



勝気な明姫奈の目には…涙が浮かんでいた。



「カレシが…堺くんがね…遠くの大学に行っちゃうことになったの」


「え?」