付き合っていることは、ふたりだけのナイショ。



蒼とそんな約束を交わした私だけど、ひとりだけ、例外にしようと思っていたコがいた。





生徒玄関に入ると、明姫奈がちょうど靴を履きかえていた。



明姫奈とは、あれから丸二日話していない。



こんなに話しないのは初めてだ。





頭ごなしに蒼をつっぱねた頑固な私に腹をたててしまった明姫奈。



今になってみれば、全部、明姫奈の言う通りだったと思う。



私はきっと、もうずっと前から蒼のことを好きだったんだ。

でも、それを認めたくなくて、自分の気持ちを見つめることから逃げていた。



明姫奈には、そんな私のことがお見通しだったんだ。





明姫奈が、ああやってガツンって私を突き離してくれなかったら、



もし、私を甘やかして、明姫奈の家にかくまってくれていたら、



私と蒼は、ずっとすれ違ったままだったかもしれない。





明姫奈は、ちょっと性格キツめの恋のキューピット。



そして、頼りがいのある、かけがえのない親友だ。





そんな大切な明姫奈と、全然話しないままでいれないよ。



だから、『ごめん』と『ありがとう』の気持ちを込めて、蒼とのことを報告しなきゃ、って思っていた。