なんで同い年の蒼にそんなこと言われなきゃならないのよッ、と噛みつこうとしたけど、

憤る私をなだめるように、手が優しく頭を撫でた。



「でもま、しょうがないよな。
蓮にしてみれば、俺が『初めてのカレシ』なんだし」



そして、ふっと笑う。

大人びた穏やかな表情で。



「いいよ、内緒で。
でもしばらくの間だけだし、学校以外の時は別だからな」



そんな余裕ある態度に胸がこそばゆくなるのを感じながら、私はとんと蒼の肩に額をあてた。



「…ありがと…」


「ん。

じゃ、キス」


「え?」


「おまえのワガママきいてやった、ご褒美のキス」


「ワ…」



ワガママじゃないもん…!



という否定は最後まで訴えることはできなかった。





掠めるようにキスされて、頭が真っ白になってしまったから。





我に返ったのは、蒼がニッと人の悪い笑みを浮かべた時だった。



「そろそろ慣れたら?
もう何回も俺にキスされただろー」


「な、何回も、って、全部勝手にしてきたキスだよ…!
もう…っ、勝手にキスするの禁止…っ」


「それは絶対無理。
おまえ、可愛いから」



かぁあああ



と顔が熱くなる。、



「『可愛い』ってからかうのも禁止…!」


「それも無理。
てか、からかってない。
クールなんて勝手にいうヤツいるけど、俺けっこう思ったことはすぐに口に出したいヤツだから」


「…」



ショートしたみたいに言葉を失っている私から離れてキッチンチェアに腰かけると、蒼はにっこりと綺麗な笑顔を向けた。



「ほら、もたもたしてると遅刻するぞ。
お付き合い一日目。
記念すべき、初の一緒ご飯。
早く食お?」





もう完璧に…。

小さい頃と立場が逆転しちゃった感が…。





こうして。



お付き合い一日目は、蒼に完全にペースをつかまれてスタートしたのだった。