こみあげるしゃっくりをこらえながら、蓮は小さくうなづいた。



「それって…
俺の彼女になるってこと…?」



こくり



顎が微かに上下する。



「もう、幼なじみじゃない…?」



泣き晴れた目を苦しげに閉じると、



蓮は震えた声でつぶやいた。



「もう、幼なじみになんて、二度と戻れないよ…」





キスをした。





唇同士を触れ合わせるだけの軽いキス。





けど、一方的に押し付けただけの昨日とは比べ物にならないほどに、

俺の胸は幸せに満ち溢れた。





夢にまで何度もみた、瞬間。





蓮を手に入れたら



こうしたい、ああしたいって、欲望を膨らませていた。



けれども、唇を離したとたん、どうしたわけか俺の胸は凪いだ泉のように静かになった。



ただもう幸せが満ちていて、あとはなんにも湧いてこない。



なに腑抜けてるんだよ、俺…。

ぼうっとするなよ。



これは、熱のせいか…?



きっとそうだな。





「蒼…」



抱き枕のように抱き締めて目を閉じると、蓮がくぐもった声で呼んできた。



「蒼…身体…すっごい熱いよ…?」



「熱い?俺はさっきから寒くて仕方ねぇんだけど…。
じっとしてろよ、蓮。
おまえ、あったかいなー…湯たんぽみたい」



「蒼?
それって悪寒じゃない…??
もう…ちゃんと安静にしないとダメだよ…!
蒼?蒼ってば!?」



俺は腕をゆるめると、そのままぐったりと身動きできなくなってしまった。



ベッドから飛び起きた蓮が慌ただしく動き出すのを感じたけれども、

ぼうとする意識は、それからほとんど働かなくなってしまった。