「え、なに…なに?」


「…停電か」



蒼の声は相変わらず落ち着いていた。



けど私は、急に訪れた漆黒の闇に、すっかり萎縮してしまう。



だって、電気が完全に消えた世界は、本当に真っ暗で静かなんだもん…。



かすかな表示ランプや、冷蔵庫の音も聞こえない。



雨と雷の音が暗闇の中でやけにはっきりと聞こえて、雷の光がチカチカと容赦なく家の中に差し込んでくる…。





蒼はゆっくりと私をソファに下ろした。



「懐中電灯もってくるよ。
たしか、玄関に置いてたろ?」


「うん…」


「ちょっと待ってろ」



と行こうとした蒼だけど、



ぴた、と動きが止まった。



ついつい…私が蒼の袖をつかんでしまったから…。