背中を撫でながら、蒼がささやいた。



「身体、びしょぬれだな。
すげー冷えてる」


「私も傘忘れちゃったから…」


「風邪ひくぞ。
早く温まらないと…」



と言われるや否や、ふわりと身体が浮き上がった。



「え…っ、ちょっ…
蒼…!?」



蒼に、いとも簡単に抱きかかえられてしまった。



しかも、女の子なら一度は憧れる、『お姫様抱っこ』…。



「やだっ…下ろしてよッ」


「っおい…ジタバタするなよ、落ちるだろ」



と言いつつも、余裕の足取りでリビングに入る蒼。



あ、温まるって…どこに連れて行くの…?

ヘンなこと…しないよね…??



「ねぇ…下ろしてよ…!
どこいくの??」


「このままじゃ冷えるだろ。
風呂場だよ。
シャワーでも浴びてあったまった方がいい」


「…」



からかうように、蒼はあの流し目をよこした。



「なに?
もしかしてどさくさに紛れて、ヘンなことでもすると思った?」


「だ…誰がそんなこ」


「俺はしたいけどー。
いつだってそういうことばっかり考えてたから」


「…」


「でも言ってるだろ。
嫌がるのを無理矢理するのは不本意だ、って」



けどさ、



とささやいて、蒼は私に顔を近づけた。



「おまえが俺を好きになったら…
ヤバい、ってことたくさんするから、覚悟しろよ」





ドン!!





突然、その蒼の宣言に呼応するように、ひときわ大きな雷が鳴り渡った。



かと思うと、





「え…?」





急に辺りが真っ暗になった。