「ありえない…」



私は腕の中で蒼に身体を向けた。



「サボるなんて…次期部長のくせに…!
こんなに濡れて…風邪でもひいたらどうするつもり??」





ゴロゴロゴロ





強い口調の私を黙らせるように、雷が鳴った。

思わず身を強張らせる。



「やっぱ、まだ怖いんだな、雷」



大きな手が私の頭を撫でて、頬を包んだ。



「でも…大丈夫。
俺がいるから大丈夫だよ」





思わず私は蒼をまじまじと見つめていた。



…あの時と、同じ言葉だ…。

『相模蒼』っていう男の子が言った同じ言葉…。



なのに…



声は低くなって、



私をすっぽり包む身体は大きくなって、



温もりはとても熱い。

息するのも辛いくらいに。



本当に、『へなちょこ蒼ちゃん』はもういないんだね…。



私はまぶしいように目を細めて、蒼を見上げる。



びしょ濡れの姿は、むしろ色気がでていて…

こんな人、芸能人でもいないんじゃないかってくらい、かっこいい…。



その色っぽい目は、真っ直ぐに私を見つめている。



私だけを、深く、深く…。