「もう、怖くないよ、蓮」





優しい抱擁。

優しい声…。





張り詰めた感情が、その大きな温もりにゆっくりとほだされて、安堵感に飲み込まれていく。



それとは逆に、こめかみから響く低い声が、甘く切なく胸を締め付ける…。





「戸締りちゃんとしとけよ。
それとも…
俺に襲われるの、待ってたの?」


「どうして…蒼…?」



こんな大雨の中をどうやって…?

部活…は?



「部活行こうとしたら雨降ってきて、雷もすごくて。
蓮のことが気になって仕方なかったから、サボってきた。
傘忘れて来たのに…あーあ、ひでぇ雨だったな」



と言う蒼の髪からは、雫がしたたり落ちて、

少し上がった息が、私の耳をくすぐっている。





嘘でしょ…。





傘が無いのに…この雨の中を走って帰ってきてくれたの…?