頭の中では、化学室での出来事がフラッシュバックのように繰り返されていた。

そして、仲川さんに告白した蒼の言葉も、ぐるぐるとまわっていた。





そこまで想われていたなんて知らなかった、っていうショックと、

そこから、くすぶるように芽生える不可思議な熱…。



ふたつの感覚が、私の心を追い詰めている。



もう、どうすればいいのか、わからない。



急に知らない世界に連れ去られてしまった。

蒼のあの強引な手で…。



明姫奈にさえ突き離されてしまって…もう途方に暮れるしかなかった。





唯一、解かることと言えば、

それだけ自分が子供だったってことくらい。



しっかりしてる、とか大人びている、とか言われたって、

人を好きになったことのない私は、

蒼や明姫奈と比べたら、結局はなんにも知らない子供と変わりないんだ。



今の私には、ふたりが…ううん、



恋をして、誰かを思って一生懸命になっている人たちが、違う世界の人みたいに思える…。



みんな…



私を置いていかないでよ…。





私…独りぼっちだよ…。





その時だった。





空が一瞬光った。



かと思うと、





ゴォオオン!!





「きゃっ!」



ものすごい音が轟いて、

思わず私はしゃがみこんだ。





雷だ…!





暗い曇天に、再び光が瞬いた。

遅れて、また怒るように轟音が響き渡る。





やだ…。



嫌な既視感を覚えて、胸がざわつく。



しゃがみこんだまま、恐る恐る見上げた私の目に映ったのは…

あの日―――雷がトラウマになってしまった日と瓜二つの光景だった。





このままじゃ…あの日みたいに動けなくなってしまう…。





私はスコールと化している雨の中に飛び出した。



そして息を切らしながら、ひたすら家路を走った。