気づけば、私は家路を歩いていた。



化学室を出て今にいたるまでのことは、あまりよく覚えていない。

ただぼうっとして、なにも考えられないままでいて、

身体が習慣づいた動きをしてくれて、ここまで来たという感じだった。





昼間は晴れていた天気は、

今はどんより暗い曇空になっていた。





まるで私の心のよう。





なんて乙女くさいことを思ったところで、嘲笑する余裕もない頬に、



ぽつり



冷たい雫が落ちてきた。





雨…。





雫はぱらぱらと振り落ち、あっという間に雨に変わって、

嵐でも近いのか、ってくらいの激しさになった。



走って帰ろうかと思ったけど、すぐに断念して近くの家の軒先に避難した。





参ったなぁ、朝は晴れてたのに…。



今朝、天気予報を見る余裕なんてなかったからなぁ…。





家までは、まだ距離がある。



けど空は重い雲に覆われて、ちっとも雨がやむ気配がない。



「…散々だな」



ため息まじりにつぶやいて、コンクリート壁によりかかった。



背中がひんやり冷たい。

濡れそぼる制服がべったりと肌にはりつく不快感が、さっきからじくじくと疼く胸のそれに似ている。



なんだかもう、泣きそうだった。