誰か…誰か…





蒼…!





ガラっ!





急に、教室のドアが開く音がした。



かと思うと、重みが消えて、



床に引きずり倒される赤石の姿が視界に映った。



「てめぇ!なにすんだよっ!」



素早く立ち上がって、怒り任せに赤石が殴りかかってくる。

けど、助けに入ってくれた人―――蒼は、

あのバスケ仕込みの動きでさっとかわすと、逆に赤石を殴り飛ばした。



バンッ、と戸棚にぶつかる赤石。



それでもまだ殴りかかろうとするところに、蒼が迫り寄ってその胸倉をつかんだ。





「俺の女に手出すな」





その声は、ヤンキーの赤石でさえ、押し黙ってしまうほど低く冷やかだった。



「な、なんだよ、付き合ってねぇんじゃなかったのかよ…!」


「今ものにしてる最中なんだよ。
邪魔するな」



ケンカ慣れしてないとは言え、身長も体格も蒼の方が痩せぎすの赤石よりはるかに上だった。

なにより、

傍観している私でさえ緊張を覚えるほどに、怒りの気迫がすさまじかった…。



「…ちっ、わかったよ」



赤石は捨て台詞をはくと、蒼の手を振り払って化学室を出て行った。





「大丈夫か、蓮」


「蒼…」



茫然としながらその整った大人びた顔を見上げると、



どうしたわけか…



視界がぼやけてきた。



思わずうつむくと、



「あ…」



すくい上げられるように抱きしめられた。