それから、明姫奈とずっと話ができないまま、放課後を迎えた。



睡眠不足と一日中落ち込みきった疲れにのろのろと帰りの準備をしていたら、化学の先生に呼び出された。



「たしか今日の日直は芦名だったよな。
ちょうどいい。
実は明日の化学で実験やるんだが、ちょっと準備やっといてくれないか?」


「え、あ、はい…」


「これ、リストだから。
この数の通りだして、机の上に置いておいてくれ。
ほんの少しなんだが、これから急な出張にいかにゃならんくてなー」


「わかりました…」


「すまんなー。
まぁ、もうひとりの日直にも伝えたんだが、あいつじゃ全然あてにならんからな。
芦名はあいつと違って優等生だから助かるよ」



と笑うと、先生は汚れた白衣を揺らして足早に去って行った。





ちぇ…すぐに帰るつもりだったんだけどな…。

それで今日は家に全部鍵かけて引きこもりを決め込もうと思ってたんだけど…

優等生で通っている私。

先生の依頼は断れない。



蒼に見つからないように、とビクビクしながら化学室に向かった。





「おー芦名やっぱ来てたんだー」



道具を揃えていると、もうひとりの日直がやってきた。