「逃げちゃった。」
そう言って、沢田くんはカバンを肩にかけ直した。
「よく聞こえたね。地獄耳?」
「いや、あんなん普通に分かるって。」
そう慣れたように言う。
こういったことはよくあるのだと驚き、モテる人は違うと改めて思った。
近くの席になりたいから、変わってもらおうとするなんて、今まで経験したことない。
そんな時、いきなり、あ!と思い出したように声を出す。
私は驚いて何かと警戒していると、予想外に沢田くんはニコッと微笑んだ。
「ご褒美、今度の土曜ね?」
「え…、なに?」
「午前授業だから、その後。」
ただそれだけ言って、教室を出て行った。
「ご褒美…?」
全くなんのことだかわからなくて、その場に立ち尽くしていた私。
ご褒美…
何度も頭の中で繰り返していくうちに、思い出してきたその言葉。
デート!!!!
