◾︎ 三浦 side
「矢崎っ。」
藍川への嫌がらせがあってから、放課後。
部活着に着替えた俺は、忘れ物を取りに戻る途中、下駄箱にいる矢崎を見つけ声をかけた。
突然呼ばれたからか、ビクッと反応すると、靴に伸びていた手をとめてこっちをじっと見てくる。
「ちょっといいか。」
そう言うと、少し戸惑いながらも小さく頷いた。
「ごめん、帰るとこだった?部活は?」
「今日は、ちょっとね。」
少しぎこちなさを覚えたこの雰囲気。
二人というのは初めて。
誘った後に気づいた。
それにしても、まともに声を聞いたのも初めてかもしれない。
後ろからついてくる矢崎の声は、女っぽくてどこか色気がある。
男が好きそうな顔だし、モテるのもわかるような気がする。
