「ねえ、みんなでカラオケいかない?」
声をかけたのは、三人グループの真ん中にいるリーダー格らしき女の子。
しかし携帯片手に曖昧な反応をする沢田くんに、少し笑顔が引きつっている。
そんな時、すぐ側の窓からひょこっと誰かが顔を出した。
一瞬ビクッとなった私のことなんて、全く気づく様子もなく、一点だけを見つめていた。
彼女は内巻きにされた鎖骨まである栗色の髪を、さらさらと揺らしていながら言った。
「ハル〜!」
そして、笑顔でひらひらと手を振る。
ハル……
そう呼ばれて振り返ったのは、
沢田くんだった。
「里沙子。」
今まで女の子たちが話しかけても1ミリも関心を示さなかった彼が、その一言で立ち上がった。
「終わった?」
「うんっ、帰ろ!」
