「...確かに一理あるな。
そういうことならば、いいだろう。
俺が相手をしてやる。」
「えっ...」
今なんと...?
壬生浪士組の中でもかなりの剣客である斎藤先生が、相手...?
「え、あの、試合、ということですか?」
「それ以外に何がある。」
それだけいうと、彼はさっさと準備運動に取りかかる。
「それと、俺は柔術の心得はない。
俺は剣術で挑む。
そのほうが実践に近いだろう。」
確かに実践的だが...。
素手ではやはり無理がある。
「あの、ならば短刀を用いても構いませんか?
いつも懐に忍ばせているのですが。」
荷物から鞘に収まった短刀を取り出す。
「それならば短刀型の木刀がある。
それを使え。」
「分かりました。」
そして、両者 準備が整い、お互いに向き合う。
礼をしてそれぞれの型でかまえる。
しーんとした空間が続く。
しびれを切らした私はにこりと微笑んで告げた。
「...柔術は相手の力を利用して発揮するもの。
そちらからどうぞ。」
「...では、参るっ!」
いきなり素早い面を繰り出した斎藤先生の木刀を
短刀で受け流し、そのまま一気に間合いを詰める。
「...何っ!?」
斎藤先生が言葉を発したとき、もうすでに私の短刀が斎藤先生の首筋を捉えていた。
それらの動作はまさに一瞬の出来事だった。