「...このように簡単に捕まってしまうぞ...?」
近づいてきた顔が怪しい笑みを浮かべている。
すぐにでも鼻と鼻がつきそうな距離だ。
「っ...!はなしてください...!!」
すぐに距離を取りたい気持ちでいっぱいだが、相手は局長だ。
下手な行動はできない。
なんとか抵抗しようと空いているほうの手で、顎をつかんでいる芹沢局長の手をどけようとする。
「...ふん、女の力などたかが知れている。」
その言葉を聞くと、プツンと私の中で我慢していた何かが解き放たれた。
女、女って......どうして女だからってそんなに差別されなくてはならないのか。
私はいい加減 腹が立ち、空いている手をぎゅっと握りしめる。
そしてそのままありったけの力を込め、彼の手首の筋あたりを思いきり殴った。
「っ!?」
急に来た衝撃で怯んだのか 彼の手の力は弱まり、
私はすぐさま距離を取る。
「ご無礼をお許しください。こうでもしないと放して下さらないようなので。」
今まで掴まれていた手をコキコキと鳴らし、彼を睨みつける。
「フッ...ハッハハハハッ!!!
ただの小娘かと思いからかってみたが、意外に力が強いな...。少し痺れたぞ。
先程の抵抗は演技か...?」
目の前の男は殴られた手首を押さえながら高らかに笑う。
私は何も言わず、ただ睨みつけていた。
