順調に酒が進んだ頃。
「貴様、女子だろう。」
彼は目も合わせず、静かにこう言った。
ふいに言われた言葉に私の心臓がドクン...と嫌な音をたてる。
やはり私の男装は無理があったのか......
「...女子だとしたら、お役には立てませんか。」
グッと拳を握りしめ問う。
......ここでも、差別されるのか。
すると芹沢局長は一瞬こちらに目線を寄こし、また酒のほうに視線を戻した。
「ふん、そうきたか。
しかし、ここは本来女人禁制だ。
どういうわけで隊医などという地位についた?」
猪口をくいと傾けながらニヤリと笑っている。
どうやら彼は純粋に訳を聞きたいようだ。
私は壬生浪士組と出会ったきっかけや、江戸でのこと、隊医になるまでの経緯を話した。
「...なるほど。そういうことか。
......いいだろう。」
「え...」
「隊医のことは認めてやろう。住み込みの件もだ。
だが貴様...、その程度の男装ではいづれ.....」
「っ!?」
突然グイッと手を引かれた。
持っていた猪口を落とし、ころころと転がっていく。
一瞬何が起きたのかわからなかった。
しかし、それは私のあごを上に向かせるように添えられた指と、接近した彼の顔ですぐに我にかえった。
