耳元でそんな事を言われて、ドキドキしないわけない。でも、簡単にドキドキさせられたのは、悔しいから、
「ドキドキ、してない。」
下を向きながらそう答えると、
「じゃあ、こっち向けよ。」
無理だよ。だって……。顔を上げない私を水無瀬くんは、人差し指と親指を使って私の顔を無理矢理上げた。
「の割に、真っ赤だけど。」
どうしよう……。ドキドキが止まらない。
お互い見つめ合っていたけど、先に水無瀬くんが、我に返り、
「わりぃ。忘れて。」
私から離れて、2階へ上がっていってしまった。
水無瀬くんが、2階へ上がった瞬間、へにゃへにゃと腰が抜ける。
「忘れるわけ、ないじゃん。」
ドキドキが、止まらないまま小さく呟いた。