セイリンはクライツの部屋を出て、自室に戻った。

ほんの数口しか飲んでいないワインが、身体を巡っている感じがした。


(ぼーっとする…)


セイリンは着替えることもなく、ベッドに寝転がった。

涙を流したのはいつ振りだろうか。

頭の中を整理しようとするが、うまくまとまらない。

フーッと溜息をついて、セイリンは身体を起こした。


「見回りに行こ…。」


セイリンは服を整え、屋敷を巡回することにした。

別にそんなことはしなくてもいいが、歩きながら酔いを醒ますことにしたのだ。

部屋を出て、いつも通り上階から順に見回る為に階段を上った。

廊下に出て、ライザの部屋がある方向に歩き出した時、


(…ん?)


セイリンは振り返った。

何か…微かに音が聞こえたような気がした。

振り返った先はマーガレットの部屋しかない。

セイリンはマーガレットの部屋の前で立ち止まり、そっと扉に耳を傾けた。

しかし、何も音はしない。


(気のせいか…)


今日はアルコールが入っているから、その所為で勘違いしたのか…。

セイリンは思違いだと自分の中で納得し、扉から離れてライザの部屋のがある方向へ歩いた。