「あぁ?足がなんだって?俺がなんかしたのかよ」
図書室に入ろうとしただけの紗良の足元に先輩が足をだす。
三年の先輩。
何度か廊下ですれ違ったことがある。
一年の間でも有名だ。
バスケ部のエースでもあり、学校一の不良でもある永瀬岳先輩。
(え、えぇ〜私も何かしました〜?)
状況が理解できない紗良はただ呆然とする
「俺が何したって言ってんだよ!」
突然、手に持っていた本を先輩にたたき落とされた。
「え、いや、私はなにも……」
怖い、怖い、怖い
沙良より身長の高い先輩が上から睨みつけてくる。
岳先輩と一緒にいた他の先輩も沙良を見ている。
多くの先輩に睨まれ、いきなり本をたたき落とされた恐怖で涙が出そうになった。
「ちっ、なんなんだよ」
先輩が舌打ちしながら教室に戻っていくと周りにいた先輩も図書室を出ていった。
沙良と一緒に図書室にきていた桃と美羽が心配そうに沙良に声をかける。
「沙良、大丈夫?」
桃に声をかけられわずかに頷く。
手足がまだ震えている。怖かった。足元に落ちている本を美羽が拾ってくれた。
なぜ、先輩は怒っていたのだろう。
沙良には理由がわからなかった。
図書室に入ろうとしただけだ。
だがいきなり怒る理由も無いはずだ。
必死に考えるが、なにも思いつかない。
「沙良?大丈夫?ごめんね。私が図書室に誘わなければ……」
桃が謝ってきた。図書委員であった桃に誘われ、沙良は初めて図書室に来たのだ。
「ううん。大丈夫...」
すると、美羽が口を開いた。
「ごめん…沙良……私のせいだ...」
美羽にも謝られた沙良は驚いた。
「え?どうして美羽が謝るの?」
美羽は戸惑いながらも事情を説明してくれた。
「いや、えっと...桃、足怪我してるでしょ...?
上履き脱いでる時に痛いって言ってたから私が足大丈夫?なんて聞いたから...先輩変な勘違いしちゃったのかも...」
そうだったのか。沙良は全く気づかなかった。
沙良たちの通う中学の図書室は入室の前に上履きを脱ぐのだ。
しかも桃は先日のバレーの試合で足を怪我している。美羽は桃を心配してつぶやいたのだが先輩は気に食わなかったらしい。
「そっか……先輩それで勘違いしちゃったのか……」
沙良は一刻も早く図書室から出ていきたかった。
それを察した桃は、
「美羽、沙良と一緒に今日室帰ってあげて。私まだ委員会あるから大丈夫。」
と、笑いながら