「ルカにそんな思いをしてほしくない。」


どうしてこの人はこんなにも私の気持ちを優先してくれるの?そう思いながらも、私もそうだと思った。気付けばいつもシエルの事を一番に考えている。

シエルに抱きしめられ、身を寄せた。シエルの震えが全身に伝わってくる。私もシエルの背中に腕を回し抱きしめた。


「凄く怖い。」

「だったら__」

「シエルを失うかもしれないと思うと、怖くて堪らない。」


牙を立てられる事の恐怖、そして痛み……そんな考えは少しも浮かばなかった。何の役にも立てないのかと思うと自分が不甲斐なくて、シエルの体を心配しながらも、嫉妬もした。

シエルの頬を両手で包み込み、不安そうな顔をしているシエルに笑いかけた。


「ずっと傍に居てほしい。 シエルとずっと一緒にいられるなら、血を吸われる事なんてちっとも怖くないよ。 もう好きじゃ治まんないくらい大好きで、そんな言葉も霞んじゃうくらい愛してるから……怖いなんて思わない。」


シエルは今にも泣いてしまいそうな程切ない表情を浮かべ、微かに笑みを漏らすと私の唇にそっとキスをした。

片手で腰を抱かれ目を閉じると、柔らかい感触が首筋まで落ちてきた。鈍い痛みに襲われ、思わずシエルの胸元でシャツをグッと握りしめた。その手にシエルの手が重なり、少しずつ体の力が抜け、瞼が重くなり始めた。

膝に力が入らなくなり、シエルが抱き留めてくれた。そこでプツリと意識が途絶えてしまった。