「っ……る、か。」

「ルカ? それがお前の名前か?」


小さく頷くと顎から男性の手が離れた。

多少距離はできたけど、それでも近くて緊張や恐怖で胸がドキドキしている。


「ただの人間がどうやってここに忍び込んだ?」

「…………。」


ただの人間?どういう意味?


「まただんまりか。 俺が優しく聞いてる内に話す事をお勧めするが? 痛い思いをするのは嫌だろう?」


更に鋭くなった目を見てゾッとした。


「よ、よく意味が……分からないんだけど……。」


眉間に皺を寄せられ不安が募る。

鏡に映った男の人と声は違うけど……この人は全く関係ない人なのかな?


「惚ける気か? 人間に限らずヴァンパイアでも敷地内には簡単に入る事が出来ない様になっている。 だがお前は書斎で意識を失っていた。 俺が納得するだけの理由を言え。」


え?この人何言ってんの?ヴァンパイア?私もしかしてまだ夢の中?これが夢じゃなければ何なんだろう。

たまにテレビで流れている嫌な事件が脳裏を過ぎった。

この人危ない人なんじゃ……空想世界を楽しむ変質者……とか……。